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『物語の源泉』| 木々津克久インタビュー

日本のホラー漫画界で活動をする木々津克久は、「人情のホラー漫画家」と呼んでも過言ではないだろう。例えば、『ふらんけんフラン』(秋田書店)での、ブラックユーモア溢れる「医療」ホラーを展開しているし、『ヘレンesp』(ともに秋田書店)では、視力も聴力も持たない(それゆえに喋ることもできない)主人公の「奇跡的」な心あたたまるエピソードを描き続けている。「陰」と「陽」の、2つの異なった地場を持つ作品を並行して編み出しているホラー漫画家に話を訊いた。※インタビューのすべては今後リリースされるUNSORTEDの新メディアに収録されます。なお、本インタビューは昨年収録されたものであり、最新の情報を保証するものではありません。

マンガを描こうと思ったきっかけは何ですか?

僕の子どもの頃は、マンガに対する憧れは、今よりも強かった気がしますよね。読んでいたのは、ジャンプ。ジャンプに連載していた漫画も、あの当時は、グロいものが多かったような時期だった。キン肉マンも血まみれだったし、北斗の拳もあった。マンガを読むことは、普通に楽しみのひとつだったような気がしますね。

マンガ家になろうと思ったきっかけは?

小さい頃から絵は好きでしたね。やっぱり、高校生や大学生になると、おしゃれとか格好つける方向に努力するんだけれど、あまり実を結ばずに、上辺だけなぞってみたりしていました。そんなことしてたらいい歳になってくる。そろそろ学生生活も終わりで、もう綺麗事は言ってられないので、何かやるのなら根っこからやるしかない。そうじゃなかったら、がんばっておしゃれしていた人たちからバカにされたってしょうがないんですよね。一番、自分が好きなものをなんとかするしかなくて、そこを逃げて違うところでやっていっても、お客様も満足しないだろうし、上辺だけでがんばっているというのは突き抜けないんじゃないかなと思ったんです。
その時は、賭けられるものが、もう自分の人生しかなくって…(略)。
※2013年2月発売の新メディアに掲載されます。

ふらんけんフラン (C)木々津克久 秋田書店

それはいつ頃の時期ですか?

26歳のときに。

学生生活を終えてから、結構時間がかかったんですね。

造型屋とかいろいろやっていたんです(いまでもワンフェスには参加しているそう)。それまでも、片手間に、いろんなところに引っかからないかなと思って、手を出して、やっていたんだけれど、気持ちが半端だからだめだった。よそのもんに手を出して、賞を獲れる人っているんだけれども、僕は全然だめでしたね。

マンガ家になるために具体的にやったことは?

※この回答は、今後リリースされる新メディアに収録されます。

木々津克久は、2001年に月刊マガジンspecialでホラーマンガ『おどろ』を連載するようになり、4巻までの単行本をリリース。その後、3年間のブランクの後、秋田書店の「チャンピオンRED」に移籍し『フランケン・ふらん』の連載をスタートさせてから、ホラー色の強い『フランケン・ふらん』とは対照的な、『ヘレンesp』を描きはじめた。

いま描いているマンガに、『フランケン・ふらん』と、『ヘレンesp』があるけれども、対照的ですね。一方は、ホラーマンガ。一方は、眼が見えない、耳が聴こえない、喋れないという、常人よりも感覚の鋭い主人公が登場するマンガですね。いままでに影響を受けたマンガは何ですか?

格好つけずに、一番自分が何が好きだったかって言ったら、『ゲゲゲの鬼太郎』みたいな怪奇マンガでした。スポーツマンガには興味なかったですね。その他にも、影響を受けたマンガは、ものすごくいっぱいあります。結構、オーソドックスなものからの影響が強いですね。

ホラーを描いていると負のエネルギーに犯されたりしませんか? 何か2つの対照的な作品があるからバランスとれているんじゃないかなと思いましたが。

あまり意識したことないですね。

でも、『ヘレンesp』と比べると、『フランケン・ふらん』が先に描いたマンガなんですよね。

ふらんが微妙に先です。結構、その微妙な差で、ふらんを優先せざるを得なかったんです。

ふらんけんフラン (C)木々津克久 秋田書店

『フランケン・ふらん』は前作の『おどろ』と比べてなにか違ったんですか?

『おどろ』の頃は、マンガを描く上でいくつもの条件があったんですね。人が死んではいけないし、グロいシーンはダメ。つまり、ホラーをやるときの飛び道具がまったく使えなかったんですよ。それはそれで面白く描いていたました。
『フランケン・ふらん』では、その制約がなくなったけれど、それはそれでまたがんばらなければならないところがあるんだけれどもね。

『ふらん』の後にすぐはじまった『ヘレン』(眼も見えず、耳も聴こえず、言葉も喋れない主人公)の設定はどうやって思いついたんですか?

『フランケン・ふらん』と『ヘレンesp』をやる前に、入院してた時期の影響が一番強いと思いますね。あの時、本当に辛かったんです。自転車事故で、膝の下の骨が割れて、ばらばらになってしまって。事故の直後は、自分で立てず、救急車で病院まで運ばれたんです。「じゃあ、ちょっとネームでも書きにいくか!」と思い立って、自転車でガーッと行って、ドカン…。それから、半年くらい入院していました。病院からは、「ひどい怪我歴代2位」と言われましたね。
入院していた間もマンガ描いてたけれど、全然ダメでしたね…(略)。
※2013年2月発売の新メディアに掲載されます。

ヘレンesp (C)木々津克久 秋田書店

では、ある意味、入院が試練になったんですね。

あれは、本当にすごい体験でしたね。どんどんおかしくなってくる人もいる。死ぬのを待っている人だって普通にいる。病院の外に出ると、なんでこんなにみんな健康なんだろうって思いましたね。
退院して、何本か描いたマンガが全部、交通事故からはじまる話だったりしました(笑)。僕の描いているマンガには、実体験が出やすいんです。ヘレンも最初に事故が起きましよね。ふらんは、2話目で、事故でばらばらになった女のコからはじまる話がある。他でも描いていたりするかも知れないです。

ヘレンesp (C)木々津克久 秋田書店

作品の中に実体験が出るっていうのはわかるけど、毎回読み切りですよね。マンガのネタを出すのに、どういう時にアイデアを思いつきますか?

※今後リリースされるUNSORTEDの新メディアに収録されます。

本屋でも、まったく関係ない本を手に取るようにしている?

なるべく、自分が知らないものを見た方が、アイデアになりやすいと思うんですよね。新しいものを読んで驚きがあったり。

漫画家の人は一番そこが悩みどころなんじゃないかなと思うんですが、短期間でアイデアを出すコツは?

ある程度技術論はありますね。「面白い要素がいくつかあるけど、そのままじゃ使えない」っていう場合には、自分のマンガとはまったく関係のない、ルポルタージュや、ドキュメントを読んで、現実の凄みを感じたことと自分のマンガの設定を組み合わせていくと、「なるほどな」っていう感じで思いついたりします。
例えば…
※今後リリースされるUNSORTEDの新メディアに収録されます。

本なりで自分のマンガにつながりそうなネタを見つけていって、その時にメモはとっている?

とっているんだけれど、後で見ると全然面白くない(笑)。それはそれで、多分こういうことなんだろうなと思い直して、別のところに転用したりします。

ちなみに、描く時間と、資料を集めている時間と、どちらが長いですか?

ペン入れしている時間が一番長いですね。本読むことは、趣味だから。時間が空いてれば、なんかやってるんだよね。使い道ないかぐらいに思っています。

スタンダードかも知れないけれど、アイデアをストックして自分の中で組み立て直してつくるんですね。アイデアを思いつきやすい環境ってどういうもの?

入院していた時は、とにかく病院なので、真っ白な空間だけしかなかったんですが、自分の部屋で仕事をしている時は、気を紛らわせるものがいっぱいある。本棚見ると、気になる本があり、自分の考えを反射できるものがいろいろあるんですよね。僕にとっては、そういう方がアイデアを思いつくには、いい環境なんだと思います。ある程度、アイデアになるものがいろいろあった方が、リアクションのようにアイデアが生まれたりもすると思います。

今度、ドイツとイタリアでも発売されるらしいですが、海外で自分の漫画が受け入れられるってどうですか?

まあ、ドラゴンボールでもそうだし、NARUTOだってそうなので、すでに売れている人が多いから、自分は大きなことは言えない。

ホラー的なものも、海外で受ける理由の一つなんじゃないですかね?

マンガって、ドラマとか映画を紙でやってるのと変わらない。マンガを、ドラマや映画の代替のメディアとして考えると、マンガの中に描かれているものは、ある程度の倫理が守られているものなんです。いわば、ハリウッド映画的なものが多いんですね。海外には、ストーリーのある読みやすい媒体が山ほどあるんですが、グロいものは、創作というジャンルにおいては思ったほどないんですね。
あとは、風刺文化。現実をおちょくるものは昔っからあって、例えば、「モンティ・パイソン」だったり、「ザ・シンプソンズ」、「サウスパーク」などもあります。アメリカが多いけれど、有名人をけなして読ませるものがいっぱいある。向こうは、創作には厳しいんですが、ドキュメンタリーは市民権を得ているので…(略)。
2013年2月発売の新メディアに掲載されます。

ヘレンesp (C)木々津克久 秋田書店

『フランケン・ふらん』のベースには社会風刺があるんですね。

『フランケン・ふらん』は、社会風刺が多いですよ。手塚治虫先生も、「漫画の本質は風刺だ」って言ってましたしね。藤子不二雄F先生が、「僕は風刺じゃありません」って言っていますが、あれは嘘ですよね。

風刺っていうと、新聞に載っているコマ数の少ない漫画を想像してたけれど、いっぱいあるんですね。

風刺って、実はいろいろある。長編大作の映画だと思っているけど、基本が風刺だったりすることが多い。

質問が飛びますが、少し前に流行った、「ツンデレ」や、「ギャップ」に関してはどう思いますか?

ギャップは、昔からあるように思える。「風と共に去りぬ」を観ると、映画の前編はスカーレット・オハラ萌えで通している。日本でいまやっている萌えって、4~50年代のハリウッド映画に近いと思う。「ローマの休日」のオードリー・ヘップバーンみたいに、大作大女優の映画と作りが似ているんだよね。
※今後リリースされるUNSORTEDの新メディアに収録される予定です。

社会風刺っていう話がありましたが、不思議だなと思うのは、文学作品とか漫画でもそうだけれど、漫画の書き手って、本当にズレていたらできないですね。漫画の中に流れている倫理観とか、そういう部分はずらしちゃいけない。要するに正常な世界があって、そういう世界があるからこそ際立つような気がするんですね。そういう日本の漫画が海外に行くっていうのは、海外の人たちも共通の認識があって、楽しめるんだよね。そこら辺を漫画書く人って求められると思うんだけれど、そういう一貫した雰囲気を漫画に持たせるのにはどうしたらいいんでしょうか?

漫画はコードがある。そこら辺は編集の人がちゃんとやってくれます。僕は編集者の役割っていうのは大きいと思います。

いまは電子出版で自分から直に販売できたりして、編集者抜きでもできたりするじゃないですか。でもやはり編集者は重要だっていうことでしょうか?

一人でやっていると、作家の幅が狭くなってしまうような気がする。
日常系のマンガで、友達とだべっているような4コママンガが、ネットではよくあるじゃない。だけれど、ストーリー漫画っていうのは、一人では難しいと思いますね。
作者のエゴで描いてしまうような、作劇に必然性のないエロとかグロをやってしまうと、マンガのコードがたるんでしまうと思う。

『ヘレンesp』では、基本的には、感覚の鋭い少女がいて、普通の人間には見えないようなところに気づいて、それがストーリーになっているっていう。

そういうのが、結果的に増えたっていう感じですね。

毎回読み切りですよね。2回、3回と続くストーリーは描かないんですか?

そういう企画が通ったことないんです(笑)。一応、描いていくんだけれどもさ。つなげたらつなげたで大変でしょうけれども。

『ヘレンesp』では、何か強烈に一つのことが言いたいというような、メッセージはあるの?

「世界は救われる」「ものすごく世界が美しい」という信念がある。それは入院している時に実感したこと。人はどんどん不幸になって死んでいくんだけれども、それでも、奇跡的に成り立っていくのは、ものすごい美しい状態でね。

世界は美しいってなかなか思えませんよね。退院した時のシャバの風景ってすごくキラキラしてたんでしょうね。

入院中に打ち合わせに行った時、兄貴に車に乗せてもらって、シートにもたれながら、しばらく窓の外の風景を眺めていたんだけれど、東京の夕方の景色が、ものすごい美しかったんです。何段階かその美しさを感じた瞬間がありました。2週間ずっと寝たきりで、先生から上半身起こしていいって言われ、起き上がった時に、景色が水平になった時に感動したんです。あと、自分は、廊下側のベッドにいたから、病室の窓が遠くて、外の風景を全く見てなかったんだけれど、車椅子に乗れるようになった時は、窓のところにいって、ずっと外の景色を眺めていたんです。
例えば、病気で絶望的な状況に置かれている人が、現代の日本の医療によって助かる、生き延びることができると思える瞬間が来る、というのは、メッセージとしてはいいのではないかと思いますよ。

チャンピオンREDにてフランケン・ふらん連載中


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